Q 現在、市町村合併の「住民投票制度」導入が検討されていますが。

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 合併問題の是非について「住民投票制度」を検討することは重要です。その場合も公平・公正な情報提供や十分な議論が絶対に必要です。
しかし、いまの国会(第151通常国会)で提出されている合併特例法改正案の「住民投票制度」は「合併の可否」ではなく、合併を促進するための一方的な手段として使われようとしています。 

 現在、原発問題や空港などの大型公共事業の問題で住民投票を求める運動が各地で展開されています。このように市町村合併問題についても、静岡県の静岡市・清水市などでも住民投票で判断すべきという運動が起っています。住民の総意で市町村合併について是非を判断するということでは、直接民主主義的な住民投票制度の導入が妥当な場合があります。

 住民投票で判断する場合には、前提条件が必要です。住民投票をするためには、住民が適切に判断できる公平・公正な情報提供やその下での十分の議論の保障が絶対に必要です。

 静岡市・清水市の合併問題で住民投票を求める運動を進めている「静清合併の問題点を考える市民の会」が意見広告(2000年8月)を出しました。それでは「いい点悪い点をわかりやすく示して、市民が合併の是非を判断できるように議論することが必要ではないでしょうか。そして合併の是非を決めるときには住民投票を行い、そこに示された意思を尊重することが本来の住民自治のすがたです」と主張しています。

 しかし、政府・総務省や地方分権推進委員会が検討している「住民投票制度」は、大きな問題があります。

 2000年11月22日に自治省(現総務省)が発表した「市町村合併の推進に係る今後の取組」では、「市町村合併についての住民投票制度の導入」を明らかにしました。その内容は「自主的な市町村合併の推進において、地域住民の意思を反映させる仕組みとして、住民投票の制度化を図る」こととし、「市町村合併の推進の目的に限定にしたものとする」としています。

 また、同年11月27日の「市町村合併の推進についての意見」では「住民発議制度の拡充と住民投票制度の導入」では、「住民発議が行われても合併協議会設置に至らない場合が多いことにかんがみ、住民の意向がより反映されるよう、住民発議による合併協議会設置の議案が議会で否決された場合に、合併協議会の設置を求める住民投票制度の導入を検討する」としています。

 この意見を受けて総務省は今の国会(第151回国会)に合併特例法改正案を提出しました。これは合併協議会の設置を議会や首長が拒んだ場合に、有権者の6分の1以上の署名があれば、設置するかどうかを住民投票を行うことができるというものです(資料「地方自治法等の一部改正する法律案」参照)。

 合併協議会の設置の発議が議会で「否決」された時のみに、住民投票制度を行うということは決して公平・公正なすすめ方とは言えず、「合併の是非」ではなく、合併を促進するための一つの手段としてつかわれてしまいます。

 この「住民投票制度」については、「合併」という議論だけでなく、幅広い議論で制度化を進めるべきです。