「行政組織を簡素化でき、職員数を減らし」、その上で「専門職員を配置することができる」といわれていますが。

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 現在、切実に求められているのは合併による専門職員・組織の配置ではなく、自治体職員の増員です。 

 確かに組織が大きくなると専門分化が進み、特定の専門職を置くことができます。しかし、小規模の自治体でも専門的に研究・学習し専門的な能力に秀でた職員はいます。その専門性を生かして積極的な政策を展開している自治体は、規模に関係はしていません。

 さらに自治体リストラのもとで、全国各地の自治体で人減らし合理化が進められています。2000年だけでも、全国の地方公務員が27861人が削減され、そのうち9065人が総務企画、農林水産、土木の一般行政職員が削減されています。このように現在の政策自体が「専門職員の配置」と全く逆行する状態となっています。

 昨年6月に大規模食中毒が発生した雪印大阪工場を管轄していた大阪市では、その直前の4月に24ヵ所あった保健所を1つにし、食品衛生監視員を12名削減していました。札幌市でも9ヶ所あった保健所が1ヵ所になっています。

 また日本は国際的に見ても、公務員数はかなり少ない状態です。98年度調査で人口1000人当たりの公務員数が、日本が38人であるのに対して、イギリス81人、フランス97人、アメリカ75人、ドイツ65人となっています(別表「諸外国と日本の公務員数等比較」参照)。それは地方公務員数も同様な状況です。そのもとで全国各地で自治体労働者の自殺や精神的な疾患が多発しています。

 2000年11月27日に地方分権推進委員会が首相に提出した「市町村合併の推進についての意見」では、「合併の必要性」の一つとして、「担税者としての国民の意識への対応」をあげています。その内容は「民間企業等において経営合理化策等がこうじられている社会経済情勢や、現行の地方行財政運営の仕組みに対して国民の中には厳しい意見があること」から、「地方公共団体において、徹底した行財政改革を実施するとともに、市町村合併を強力に推進する必要がある」と強調しています。

 つまり、「自治体リストラ」として、市町村合併を行うことが「必要」と強調しています。  

 自治体職員の削減は保健医療、福祉、教育などの住民サービスの低下に直結します。現在、切実に求められているのは合併による専門職員・組織の配置ではなく、自治体職員の増員です。

諸外国と日本の公務員数等の比較(「春闘データ白書2001年版」新日本出版社より)

統一国家

日本 イギリス フランス
人数
(千人) 人口1000人当り
公務員数(人) 人数
(千人) 人口1000人当り
公務員数(人) 人数
(千人) 人口1000人当り
公務員数(人)
総人口 1億2649万人 5901万人 5849万人
中央 国家公務員(A) 825 6.5 366 6.2 1,511 25.8
国防(B) 291 2.3 320 5.4 574 9.8
政府企業(C) 464 3.7 1,521 25.8 1,268 21.7
計(D)=(A)+(B)+(C) 1,580 12.5 2,207 37.4 3,353 57.3
国防除き(D-B) 1,289 10.2 1,887 32.0 2,779 47.5
地方公務員(E) 3,249 25.7 2,598 44.0 2,301 39.3
総計(D+E) 4,829 38.2 4,805 81.4 5,654 96.7
国防除き(D+E-B) 4,538 35.9 4,485 76.0 5,080 86.9

連邦国家

アメリカ ドイツ
人数
(千人) 人口1000人当り
公務員数(人) 人数
(千人) 人口1000人当り
公務員数(人)
総人口 2億7000万人 8206万人
中央 国家公務員(A) 2,034 7.5 187 2.3
国防(B) 2,135 7.9 472 5.8
政府企業(C) - - 620 7.6
計(D)=(A)+(B)+(C) 4,169 15.4 1,279 15.6
国防除き(D-B) 2,034 7.5 807 9.8
地方公務員(E) 15,969 59.1 4,017 49.0
総計(D+E) 20,138 74.6 5,296 64.5
国防除き(D+E-B) 18,003 66.7 4,824 58.8

* 原則として1998年のものである。

資料:国公労連まとめ